「空のエーテル」というのはGXで少しだけ書いたパロディネタなのですが、サイト上に載せていたのは吹雪と藤原のおはなしだけで、それ以降の分はプロットすらろくに残っていないというひどいありさまなので(私はどんな長い話でも基本的にプロットを作らずに書きます……)、今回サイトの引越しにあたってどうしようか少し迷ったのですが、まぁせっかくなので書き終わっている分だけは公開しておくか……ということで、エドと拓磨くんのおはなしを追加で載せました。こちらは身内にだけ読んでもらっていて、ウェブでは初公開のものになります。
長編シリーズものというのは上手く完結させられずに書き飽きるのが世の常というもので(完結させる方もたくさんいることはもちろん存じておりますマジですごいと思います……)、いうて空のエーテルは1話完結ですからね! という甘え根性丸出しの公開です。大目に見て下さい。
で、ついでといってはなんですが、他の組み合わせについてもここに残しておこうかなと思います。なにせプロットがないので私の記憶に残ってる範囲の漠然とした内容ですが、なんとなく雰囲気が伝わると良いかなと思います。
長いので興味のある方だけどうぞ。
▼つづきを読む
各話のタイトルは以下のようになります。
01 変質 吹雪と優介
02 光 琢磨とエド
03 共鳴 準と明日香
04 神 剣山と翔
05 愛 ジムとヨハン
06 空 亮と十代
万丈目さんと明日香さんについては、公開分の中でも少しだけ設定が見えるようになっています。万丈目さんは「02 光」で登場し、光を観測する拓磨くんの担当、共鳴者を引き合せる役職に着いています。家柄からエリートな立場の彼は、空を飛ぶことを許されていません。
明日香さんの名前は直接は出ませんが、吹雪さんについて問われた拓磨くんが、「きみのその腕を取りつけてくれた技師の兄だ」と返しています。彼女も良家の息女なので単独で飛ぶことは出来ません。共鳴者が見つかれば吹雪さんのように戦闘に参加することになりますが、それまでじっとしていることはとても耐えられないと、医療技術者として活動しています。
「03 共鳴」では、叶うのならば明日香さんと共鳴し、自分も空で戦いたいと望む万丈目さんと、同じく空を飛ぶことを渇望しながらも自身に光の啓示が下らないことに悩む明日香さんとのやりとりが描かれます。(※書いていません)
また、「02 光」で拓磨くんが導いた共鳴者のリスト(万丈目さんが預かっていたやつ)には、「04 神」に登場するアダムとイヴ、剣山くんと翔くんの名前が書かれています。
彼らはともに「最強のイヴ」十代に憧れ、共鳴者が見つかるまではそれぞれ単騎で飛んでいました。単騎経験が豊富だと、アダムとして啓示を受けた際に反発を覚える者が時々いるのですが、剣山くんはそのパターンで、初対面のふたりはまったく上手くいきません。
ツンケンした関係が続く中、訓練中に誤って落下した先で、翔くんは偶然、「05 愛」にて登場するイヴ、ヨハンに出会います。戦場で幾度もの戦果を挙げてきたヨハンは、自分たちが空で見ている神の姿についてを語り、翔くんの悩みを解決させたような、ただはぐらかしただけかのような、ふんわりとした語り口で対話を行います。そしてそのとき、翔くんを探しにやってきた剣山くんは、近くにいたジムと出会ってやはり言葉を交わしていました。
迎えに来た剣山くんは落下について謝罪し、それを受け入れた翔くんは、自らの頑なさにも非があることを認め、互いに少しだけ距離が縮まりました。彼らも、いずれジムとヨハンに負けないような戦いを見せてくれることでしょう。
「05 愛」では、剣山くんとジムがどのような会話をしていたのかの詳細からはじまり、ジムとヨハンのペアが空で無茶苦茶やってる様子が描かれます。
戦闘のために海外からやってきた彼らはマイペースで、楽観主義で、どことなく達観しています。運ばれてきたコース料理を片付けるように軽快に、着々と敵を倒してゆきます。まるで神の愛など恐れてはいないかのようで、しかし実際には、神に対する畏怖と敬意を深く抱いています。
神の愛に抗うために必要なのは、自分たちアダムとイヴとの愛であると、そんなことを飄々と唱えるジムに、ヨハンはどこか他人事のように笑いながら、軽々と戦場を駆けるのでした。
「06 空」で、物語は少し過去へと遡ります。
丸藤亮は神殺しとして高い才能を持っていますが、共鳴者が見つからず、長く単騎で空を飛んでいました。一般的に、単騎で神を弑するまでにいたることはないと言われる中で、彼はアダムのコントロールをなしに的確に空を飛び、多くの成果を残してきました。ですが、彼の肉体はその負荷に耐えきることができませんでした。心臓を患った丸藤亮は、しかし持ち前の忍耐となにより強い正義感(あるいは、責任感)により、それでも空を飛んでいましたが、自身の限界が近いことにも気がついていました。
ある日、交戦中に症状が現れ、やむなく降下した地上は既に神の手により廃墟となっている一角でした。そこで彼は十代と出会い、そして光の啓示を得ます。
これまで誰よりも速く空を駆けていた男が、アダムとして地上に降りる……その決断はまさに断腸ともいえるものでしたが、亮は光の意思を受け入れることにしました。それもまた、彼の真っ直ぐな心でこそ為せることでした。
対する十代は悩みました。彼はただの学生で、いずれ啓示が下ることがあるだろうと思いながらも、果てのない戦いをただ見上げるばかりでした。丸藤亮の活躍を知っていましたし、彼を地上に縛り付けることがどれほどのことかを理解していました。
試行錯誤の末、十代は、他のアダムとイヴのことを見て回ることにしました。海の向こうから戦うために訪れている者がいることを知りました。イヴの代わりに空を飛ぶアダムがいることを知りました。光の啓示がなくとも志願し、単騎で空を飛ぶ者がいることを知りました。光を観測する導き手が、自分と変わらない年ごろの子どもだと知りました。空を飛ぶだけが神と戦う方法ではないことを知りました。そして、丸藤亮がその肉体を蝕まれながら飛んでいたことを知りました。
彼は決意しました。はじめて飛んだ空は思いのほか美しいものでした。けれどそれ以上に、地上にあるものを守りたいと、そのためにみな飛ぶのだと、そう強く思ったのでした。
……なんか興が乗って普通にあらすじみたいに書いてしまった。すべて実在しません。すみません。
アダムとイヴが神と戦う、という話の元ネタは、勝手に育ての親だと思っている大好きな作家・舞城王太郎の小説です。アダム、イヴ、神、というパーツは拝借しましたが、内容はとくに被ってはいません。
本家はイヴの肋骨を取り出し、アダムがそれを握って操縦するというドチャメチャに気持ちの悪い設定があるので興味のある方はぜひ読んでみてください。短くて読みやすいです。
好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)
(推し作家のプロモーションに余念がないオタクのポーズ)
※舞城はめっちゃ面白いけどものすごく人を選ぶので自己責任でお願いします。
じつはこの投稿を書いている間にパソコンの中から書きかけの「03 共鳴」(3000字くらい)が発見され、心底びっくりして肝が冷えました。間違いなく私の書いた文章なのですが、書いた記憶がまったくなかったのです。人の記憶って本当にあてにならないですね。